オヤジ流・27センチ(1/6)ドールヘッドメイクの進め方

ドールヘッド
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まえおき:ドールヘッド作家たちの作品が可愛らし過ぎる

着物・和服姿の女子ドール作りに悪戦苦闘しています。

ドールは、イラスト作成のための補助的資料として作り始めたのですが、やり始めたら案の定欲が出てしまい、必要以上にパワーを費やしています。ここまで来たからには止められません。

着物と袴に続き、次はドールヘッドへのメイクです。

ネットのオークションやフリマサイトでよく見かけるドールヘッドにはため息が出る程可愛らしいものがいくつもあります。ベテランたちのように描くのは無理としても、自分なりに納得できるメイクを施したいものです。

そこで、何はさておき、十分な準備を行った上で描画に進みたいと思います。

この記事では、準備段階におけるiPadのカメラと記録アプリのPhotoDiaryを用いた描画支援システムについて、そしてアクリル絵の具を使った実際のメイクの流れを写真でご紹介します。

メイク前の準備

ipadのカメラ機能を使ってみる

実際にルーペを用いてドールの顔を描こうとしたところ、ルーペを覗いた瞬間、「これは無理だ」と思いました。ルーペで見てもやはり小さいものは小さいのです。

ネットに出品されているドールヘッドのメイクを拡大して見てみると、例えば一本のまゆの線は一本の頭髪の太さで描かれています。果たしてこれは面相筆で描かれたものなのか、それとも特殊なツールが使われたのかは全くわかりません。どちらにしてもマクロ撮影だから見えるのであり、ルーペを用いて肉眼で見てもここまでは見えないのです。

そこで、ルーペの代わりにipadのカメラ機能を使ってみることにしました。

ipadの外側のカメラをドールヘッドの数センチのところまで近づければ、ズームを併用することで、画面いっぱいに表示できます。近過ぎるとフォーカスが合いませんので、フォーカスが合う5,6cmあたりが限界でしょうか。

いずれ近過ぎたらペンや筆が入らないので、作業できる空間は確保しなくてはなりません。

既存の写真と比較できるPhotoDiaryを使ってみる

ipadのカメラを使うことで、ルーペと比べてもかなり見やすくなることがわかりました。

折角タブレットという最先端の装置を使うわけなので、ノッペラボウのドールヘッドの上に、見本イメージが重ねられるアプリがないかと探してみました。

「フォト」「写真」「比較」で検索して見つけたのが、PhotoDiaryというiOSアプリです。アプリ本来の機能は、成長や進歩の状況を写真で記録するというものです。

過去と現在の差がきちんと比較できるように、既存の写真と同じアングルで撮影できるよう、比較イメージをプレビューに重ねられる機能を持っています。

次の写真は、ドールヘッドの拡大イメージ(プレビュー)です。リアルタイム画像となります。

ドールヘッドに数センチまで近づけたときのPhotoDiaryのプレビュー(ライブビュー)表示。5倍程度に拡大されている

見本イメージの透明度は右上にあるスライドバーで調整できます。今回用いた比較イメージは、線画です。

スライドバーを右に動かせば、比較イメージの透明度が下がり、比較イメージがはっきりしていきます。

さらに、バーを右に動かしてみます。

ドールヘッドの目は、瞳の部分がぷっくりと膨らんでいます。見本の白目の部分とヘッドの瞳のふくらみの位置とサイズを合わせると自然な目の表現ができる、かも知れません。

この写真は、最初に実験的に作った精度の乏しい段ボール製の治具を使っているため、見本とドールのサイズが合っていません。実際のメイクでは、カメラとドール間の距離や角度が可変で、剛性の高い治具を用意します。

iPadとドールヘッドの固定具

実際の作画に当たり、iPadおよびドールヘッドの簡易固定具を用意しました。

iPadの固定には、車載用のアームを流用しました。高さや角度が自由に変えられるタイプです。

また、ドールヘッドには、手作りの治具を用意しました。

適当なサイズにカットしたMDF材のBOX内部にスポンジ(すきまふさぎ用のスポンジテープです)をつけ、ヘッドを両側から挟み込む形にしました。

作業デスクはスチールなので、BOXが動かないよう四方を磁石で固定しています。

基準線(面)の描画

この方法で、まずはドールヘッドに基準となる線(あるいは面)を描きました。

この作業のために下描きペンを注文したのですが、届くまでかなり時間がかかるとのこと。

今回は絵の具を使って進めることにしました。まずは基準線に合わせて白のアクリル絵の具で、白目となる面に彩色を施しました。

さらに、目の周囲の、いわゆる赤目と呼ばれる部分にうすいピンク、そしてまゆの面に黄色を入れました。

さて、なかなかいいアイディアと思っていたiPadを使ったこの方法ですが、実際にやってみると当初全く気づかなかった問題がありました。以下良い点と問題点をまとめました。

iPad+PhotoDiaryシステムの良い点

  • 拡大率が高く、ルーペよりもはるかに見やすい
  • 見本通りになぞればいいだけ

iPad+PhotoDiaryシステムの問題点

  • 2次元表示であるため、遠近感がつかめない
  • ヘッドとカメラとの相対位置をしっかりと固定する必要があるため、固定具などが必要

使用したiPadは1レンズタイプのものです。2次元表示にしか対応できないため、筆先とドール表面との距離感がつかみにくく、筆による描写では何度か失敗がありました。

ドールの顔の表面は思った以上に立体的です。鼻や目のくぼみなどは、かなりの急こう配であり、立体感がつかめないまま筆を走らせると、思わぬ場所に色を置いてしまうことになります。

この問題を回避する方法としては、iPadでの作業は下描き用のペン(ドルフィーオンラインストアにて扱っている造形村下書き用メイクペン)による線画だけにした方がよいと思います。

今回は、このペンが使えませんでしたが、使われた方の記事によると、描いた後、時間が経つと自然に色が消えるようです。(入手したら確認します)今回のような方法にはかなり有用なツールだと思います。

なお、鉛筆や一般の水彩(サインペン)なども使ってみましたが、どちらもあまりきれいに色を載せることができませんでした。

メイク

では、基準線に沿って描いた基準面を元に、絵の具を重ねていきたいと思います。

ここからは、2.5倍のルーペのみを使い、固定具に装着したままヘッドを左手に持ち、見えやすいよう角度を変えながら、右手に持った筆で彩色していきました。

固定具のままにした理由は、ヘッドに指が触れないようにするためです。表面に指の脂がついてしまうと、絵の具がはじかれてしまう可能性があります。

オビツのヘッドには離型剤は付着していないと思うのですが、念のためにペーパーセメントソルベントで表面を磨いてから作業に入りました。

主なツール

彩色に使った主なツールです。

アクリル絵の具は、リキテックスなどの高級品ではなく、そんじょそこらで入手できるサクラのアクリル絵の具を使いました。12色セットを用意しましたが、各色1本ずつでの購入もできます。

パステルは、ほほに赤みを入れる際に使います。こちらもそんじょそこらで手に入るタイプのものを用意しました。

実際に使用した色は「赤」のみでした。もしバラで購入できるお店があったなら、必要な色だけ購入した方がいいですね。(1/3や1/4サイズのドールの場合には複数色のパステルを使うようです)

オイルパステル(いわゆるクレヨンやクレパス)は、油に顔料を練り込んだもので、ほほの赤みのような柔らかなぼかし表現には向かないと思います。

面相筆は、メーカー品に加えて100均のセットも複数購入しました。総じて使いやすかったのが、写真のCan Doのものです。特に白色のナイロン毛のタイプは腰が強く、穂先もしっかりしていて、とても100円のセットとは思えません。6本セット(ナイロンは5本)で100円はどう考えてもお得です。

アクリル絵の具は、乾きが非常に早く、乾くと耐水性になってしまうため、穂先が短時間で硬くなってしまうように感じます。硬めのナイロン毛と絵の具の相性がよいのかも知れません。

うちの息子が子供の頃にガンプラ作り用に用意していたもので、左がアクリルのクリアー(つや)、右がアクリル溶剤です。

クリアーは、最後の最後に、目や唇のつや出し用に使います。

アクリル溶剤は乾いたアクリル絵の具を溶かします。アクリル絵の具は、乾くと耐水性になり水に溶けませんが、溶剤には簡単に溶けてしまいます。

使い方としては、溶剤を綿棒に浸して、はみ出た部分や描きなおしたい部分をこするだけです。使い方によっては、絵の具の境界をぼかすような表現も可能です。

綿棒は必須アイテムです。特に先端が三角形のコスメ用は絶対用意しておきたいツールです。100均ので十分使えました。

彩色の実際

彩色は、2.5倍のメガネ型ルーペを用いて行いました。使用したルーペは別途紹介記事を書いていますので、ご興味があればお読みください。

彩色は、一日1,2時間程度で4日ほど費やしました。ヘッドを机の上に置き、時折眺めては、気になったところに手を入れるという「休み休み方式」で進めました。

一気に進めてしまうと、客観視できないことから、あらぬ結果になる可能性があります。また、コンマ何ミリ単位での作業になるため、長時間の連続作業は難しいと判断しました。

また、基準線を引いたからと言って、完璧で理想的な顔を描いたりメイクするのはほとんど困難です。偶然を楽しむ気持ちで臨んだ方がいいと途中から思うことにしました。

以下、作業の流れを写真でご紹介します。説明は各写真のキャプションに記載しました。

基準線に合わせて、色を載せていきます。最初は薄めの色から。
瞳がないと感じがつかめないため、瞳を先に描きました。
眉と上まつ毛に黒っぽい色を置きました。
瞳の中に、虹彩による反射を入れました。
瞳孔を重ね描きしました。
まゆが気に入らず、全部消して再度描き直しました。まつ毛を一本一本描き足し、口線を強めに入れました。
眉毛を一本一本下地の上に描き足しました。
唇の色が赤すぎたため、溶剤で薄くしたり、淡い色を描き足したりして調整。これで絵の具による彩色は完了としました。
ほほの赤みにはパステルを用いました。パステルをやすりで削ります。
耐水紙(パレットでもOK)に落として、まずは綿棒で試しました。
これは、別のドールヘッドの頭の部分です。綿棒で淡く彩色したのですが、結構ムラになります。
次に、5cm角のカット綿を四つ折りにして、パステルをこすりつけるようにまぶしました。カット綿は、そこらの薬局で入手できます
カット綿を使うことでムラの少ない淡い彩色ができました
カット綿を使い、ほほやあごなどに赤みを入れました
パステルは落ちやすいので、フィキサチーフ(写真右)で固定しました。今回使ったのはサクラのコンテとめ液というスプレーで、30cmほど離してふきつけると、ドールの顔の表面がうっすらと濡れたようになります。乾くと樹脂膜ができ、仕上がりはマット(つや消し)になります。ちなみに、左のオレンジの缶は、ペーパーセメントソルベントです。彩色前にこれを使いドールの顔の汚れを落としました。
フィキサチーフが乾いたら、最後に瞳や唇にアクリルクリア(つや出し)を載せました。アクリルクリアで下の絵の具が溶け出すことはありません。面相筆を使い、2度3度と繰り返し塗り、かなり厚めにしました
瞳のアクリルクリアが固まったところで、まとめていた髪をほどきました。結構美人さんです。
予定していた髪型(女侍なので、後ろで束ねる)になるよう縛り直しました
ロングヘアが長すぎるため、半分くらいにぱっさり。個人的には長いままにしておきたかったのですが、今回のドールの目的は着物の形やシワの観察なので、髪はどちらかというと邪魔な存在です。髪を切るときってちょっと切ない気持ちになります
かなりくせがついていたため、水で濡らし、くせのある部分を束ねました。しばらくこのままで待つことにします

髪の仕上げ

髪の仕上げとして、髪の束の先端を細くまとめるアレンジと、頑固なくせを取る作業を行いました。

髪の先端を細く

切りっぱなしの髪は、ご覧のようにパッツン状態です。これをスキバサミを使って先端に行くほど密度を下げ、筆の先のような自然な形に近づけたいと思いました。

スキバサミは、ごく普通の人間用のものを使いました。

一つまみずつつまみ、カットしていきます。かなり切らないとなかなかすいた感じが出ません。

かなりカットしたつもりですが・・・。

くせ取り

髪のくせをとろうと水をつけ、しばらく縛っておいたのですが、くせが相当頑固なようで、1、2日程度ではきれいになってくれませんでした。

とあるドールの販売サイトでには、熱湯をかけて髪を整える方法が紹介されています。しかし、メイクを施した状態でお湯や水が跳ねるような作業は行いたくないため、小型スチームアイロンのスチームを使うことにしました。

整える前はこんな具合です。

髪を束ねてネットを巻きつけました。ネットを使ったのは、スチームを通りやすくするためです。

スチームはこんな具合に噴射されます。

火傷をしないよう、左手にはキッチングローブをつけました。

スチームを当てた髪です。先端を尖らせた筆の形にはできませんでしたが、くせはどうにか取れたようです。

まとめ・・・ヘッドメイクにはまる人の気持ちがわかる

出来の良しあしはさておき、描いていて本当に楽しく感じました。日頃デジ絵ばかり描いているせいでしょうか、筆を使った描画が新鮮に感じられました。

ズームアップした顔は、タッチの乱れがもろに見え、目も当てられません。

果たして、ネット販売しているベテランたちはあのような高品質高精度の顔を一体全体どのようにして描いているのでしょう。謎は一層深まってしまいました。

いつかまた新たなる作品に挑戦できればと思います。

目や唇にきれいなハイライトを入れるには、照明を工夫する必要があるようです。また、左の瞳のハイライトが乱れていますが、絵の具の凸凹やムラが目立たなくなるまでクリアをもっと厚めに塗った方がいいようです。

関連リンク

iOS向けアプリのPhotoDiary紹介ページです。

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