Vocaloid、Voiceloidキャラの一人、東北ずん子を描いてみました。
今回の絵の描き方
今回は、影塗りに対して、クリスタの水彩筆のひとつ「水多め」ブラシとぼかしツールである「色混ぜ」とを組み合わせた方法を検討し、人肌、衣装(布類)、髪など使えそうな部分にでき得る限り使ってみました。
「水多め」+「色混ぜ」の効用
「水多め」+「色混ぜ」を用いて得られる効果をまとめると次のようになります。
- 適度な色むらが残せ、手描き感がある
- 気になる色むらを均(なら)すような修正が簡単に行え、色むらを気にせず塗れる
- グラデーション表現やトーン調整がしやすく変更も容易
- 筆描きの特徴である、入り抜きや止めはねが使える
- 結果としてタッチが未熟でもかなりごまかせる
「水多め」と「色混ぜ」のコンビネーション
「水多め」と「色混ぜ」の基本的なコンビネーションパターンを以下の4種類としました。
周りの色を混ぜる
「色混ぜ」で周りの色を拾い、「水多め」で平塗りした面に他の色を混ぜる方法です。
この場合「色混ぜ」で白を拾いピンク色の面に塗りこんでいます。硬さを1にすれば境界線をぼかした表現になり、硬さを大きくすればエッジの効いた境界線になります。
ムラのある部分を平たんにする
面の一部にできたムラをもう少し均したい場合、対象部分だけを「色混ぜ」で平滑にします。周りの色を適度に混ぜながら、トーン調整をします。
エッジを立てる場合は、硬さを強めにし、エッジをぼかしたい場合は、硬さを弱めにします。
エッジをぼかす・エッジを立てる
一度硬めのエッジで描いた面あるいは、面の縁の一部分をぼかしたい場合、色面側か、色のない側で縁に沿って、硬さを低めにした「色混ぜ」を走らせます。逆にエッジを立てたい場合は、硬さを高めにします。
透明色の「水多め」ブラシの硬さを調整して面の縁の外側からペンを走らせてもOKです。
色面の中にトーンの違う色面を入れ込む
色をおいた面に、明るい色や暗い色で鋭く切り込むような表現の場合、「水多め」の筆圧を弱めにして描き込むか、「色混ぜ」の濃度を低めにして描き込みます。
今回は使っていませんが、「水多め」の絵の具濃度をゼロにしても同様の効果が得られます。
影の表現は、これらの組み合わせ
基本的な影は、一枚のレイヤーに描き込んでいますが、上でご紹介した方法を用いれば、いくらでも変更ができますし、ムラも調整できます。
「色混ぜ」は、どちらかというとぼかしツールなため、やはり一般の筆とは描き味が異なります。描き味を維持したい場合は、「水多め」ブラシの設定で、絵の具濃度をゼロにすれば、「色混ぜ」と同様のぼかしたり、色を伸ばしたりする専用ツールとして使えます。特に筆ツールの鋭い入り抜きが欲しい場合は、この方法が効果的かも知れません。
下のサンプルは、この設定を用いた場合の例です。
赤の面に対して左側の白地からブラシを入れることで、面の中に白色のブラシタッチが入れられます。エッジはブラシの硬さで調整します。
同様に、面の中から外側にブラシを走らせると、赤い面の色を拾って、ブラシのタッチで描き込むことができます。エッジはブラシの硬さで調整します。
今回は試せませんでしたが、次の機会に是非使ってみたいと思います。
作例「東北ずん子」影塗り~仕上げ概要
このサンプルでは、「影」塗りにフォーカスして説明します。
今回の方法では、影レイヤーは基本一枚しかありません。トーン調整をブラシで細かく行えるため、一枚あれば事足りてしまうからです。
肌については、若干色味を変えた「落ち影」を一層加えています。
下塗り
下塗りの状態です。(髪、目を除く)
ほほやひざ、ひじには、別途「赤み」を入れています。赤みの部分には「にじみ線」水彩ブラシを用いました。
基本の影
肌、衣類に影を入れた状態です。
影はパーツ毎にレイヤーを分けていますが、それぞれのパーツの影レイヤーは基本一層です。この一層で彩色を行い、トーンと形状、エッジをぼかしたり立てたりの調整をしています。すべて「水多め+色混ぜ」で行っています。
肌の落ち影
肌には「落ち影」レイヤーを一層加え、首と手足の重なる部分に影を追加しました。
背景の配置
背景を配置した状態です。
キャラのトーン調整
右からの強い光を強調するために、キャラのみ、向かって左反面のトーンを落としています。また、同時に、照り返しのブルーをエアブラシでほんのりと入れています。
光線と色調整
最後に右からの光の軌跡とその光による反射を追加しました。また、全体に色調整を施し赤みを強めました。
制作データ
このイラストの制作データ(クリップスタジオペイントプロ)は、以下のページにてダウンロードできます。
まとめ
何冊かの「塗り」の教科書を所有していますが、プロの方々が使う塗りのツールは皆バラバラです。何故そうなのかを考えてみました。
恐らく、プロの皆さんは自分の気に入ったツールをとことん使い続けているのです。お気に入りのツールにカスタマイズを施している方も少なくありません。それほど深く使い込んでいるわけです。
つまりどんなツールであっても、自分なりに納得できるところまで磨かないと自分のものにならないのではないか。そんな気がします。
それが正しいかどうかはわかりませんが「塗り」の教科書から自分なりに学んだ点です。
ここでキャラについてです。「東北ずん子」を描いた理由は、彼女のボーカルで一曲作れないかと思ったからです。
動画の需要が増えたせいで、絵を描き、曲も書き、動画編集もして欲しいという仕事依頼をちらほらと見かけるようになりました。全部丸投げってどうよ、と思いますが、そんな仕事も楽しいのではないかと感じています。まあ、実際のところ今すぐ請け負える実力はありません。
いつかそんな仕事が余裕で受けられるよう、基礎力を積み上げておきたいと思います。