前回は、6分の1(27㎝)サイズのアクションドール(オビツドール素体・ドルフィー素体)用の着物を試作いたしました。
引き続き(馬乗)袴を試作したいと思います。
デザイン
ドールサイズの着物については、愛好家たちによる数多くのオリジナル型紙がネットにアップされています。また、ドールサイズの女袴の型紙も少なくありません。
それに対して、男子ドール用袴の型紙は見つけられませんでした。
オリジナル馬乗袴デザイン
そこで、着物と同じく、袴についてもオリジナルデザインを検討しました。
参考にしたのは、ネットに掲載されていたいくつかの「人間用」の袴の型紙と、Wikipediaなどに掲載されていた古い資料のイメージです。
今回作成した袴のPDFです。
ご自由にお使いください。(配布はご遠慮ください)
ネットにあった「なんちゃって」袴
探しに探して見つけたのが「なんちゃって」袴の型紙です。サイズは人間用で、コスプレイヤー向けに提供しているもののようです。
この人間用の型紙を、6分の1にスケールダウンして、まずは紙で試作してみました。
左は、洋裁の本職の方による作品です。これは割とよい感じです。パッと見ひだ付きズボンという感じですが、結構本物っぽいです。
右は、コスプレ用の女子馬乗袴ということでアップされていたものです。こちらもオリジナルは人間用ですが、6分の1に縮小して作りました。
右の作品は、上端、下端共円弧状になっていましたので、スカートの応用デザインではないかと思います。前後の中央にひだをつけたスカートというイメージでデザインしたのかも知れません。
本物の袴の写真と比べてみる
どちらのデザインも、単体で見る限りは袴に違いありません。
ですが、ぐるぐるポーズカタログに掲載されている本物の袴と比べると、上記2点からはどうしても洋裁感を強く感じてしまいます。
そこで、写真とネットの古い資料(Wikipediaなどに掲載されている正面図、背面図)を元に、オリジナルデザインで、いくつかのバリエーションを作ってみました。
基本サイズが同じなので、ぱっと見似たようなものにしか見えないかも知れませんが、少しずつサイズを変え、「袴らしさ」「格好良さ」という点で比較・検討しました。
よりよい部分をつなぎ合わせて作ったのがこちらです。(上の3点と同じにしか見えないかも知れませんが・・・)
紙袴による試着
紙版で一度試着してみました。
袴をはかせる際には、最初に着物の裾をたくし上げます。たくし上げた裾は、後ろ側に束ねて帯の間に挟んで固定するようです。ドールとは言え、結構生々しいものがあります。
前側から見た状態です。実物を参考にしながら作るとそれなりに和装感が感じられます。
側面です。袴の切れ目が大きすぎな感じですが、ここは布で制作する際に再調整します。生足が見えるのも可愛らしいのですが・・・。
後ろ側です。
改めて、Amazonさんから購入したものを見てみます。
これはこれでシーンやポーズによっては使えるのですが、どう見てもデザインがおかしいですね。
ズボンタイプの袴は、馬に乗りやすいようにと、股の部分がつなぎ合わされています。このようなタイプは、一般に馬乗袴(うまのりはかま)と呼ばれていて、通常は太ももの当たりで左右に分かれます。
このデザインだと、リアルサイズで股下が床下30㎝ほどしかなく、これでは馬に乗れません。
では、なぜこのようなデザインにしたかというと、想像ではありますが、恐らく着物をたくし上げなくても袴がはけるように配慮したのではないかと思われます。私が知らないだけで、このようなデザインの袴もあるのかも知れませんが、どう見ても実用性に乏しい気がします。
引き続き布による制作を進めます。
制作プロセス
デザインが決まったところで、実際の制作に入ります。
型紙の最終化と生地取り
デザイン図面の線を整え、ヒモなどを除く左右前後合わせて4パートをプリントアウトしました。2枚のプリント用紙を生地面に置き、必要な生地サイズを切り出しました。
今回使った生地には古着を用いました。色合いのグレーがデッサン用にぴったしであり、その生地も薄く柔らかで、ミニチュア用としては最適と考えました。
すでにタグなどが切り捨てられていたため、生地の素材はわかりませんが、綿と化繊の混合ではないかと思います。
着物と全く同じ手順で、仮止め両面テープを使い、生地とカッティングマット、生地と型紙を軽く固定しました。
ロータリーカッターを用いて、直線部分をどんどんカットしていきます。
前側の加工
カットした生地の裏面に襞(ひだ)の折り線を鉛筆描きしました。
山折り、谷折りに注意しながら折り曲げた襞をアイロンがけしていきます。
袴の前部分の襞ができました。
次いで、笹襞(ささひだ)と呼ばれる、左右の空きの部分の縁を三角形の部分を表側に折りたたんでアイロンがけしました。表側に折ることにより、縁を強化すると同時にアクセントになります。
三角形の尖った個所に折りを入れるのが難しく、左右で形が違ってしまいました。
笹襞に接着テープを貼り付けます。
ここまで来て、袴の裾を折っていないことに気づきました。襞をつける前に裾を折らなくてはならなかったのです。
裾に折りをつけました。順番を間違えると、結構手間がかかってしまいます。
次に、前側の左右のパーツを中央の股の部分で接続します。袴の表面のテープ代に5mm幅で両面テープを貼り付けていきます。
前側の左右を接着しました。
後ろ側の加工
次に袴の後ろ側を加工します。襞と笹襞(後ろ側は裏側に折る)の折れ線を引きました。
後ろ側については、最初に裾に折りを入れました。
続いて、襞と笹襞を折り、笹襞はテープ接着しました。
後ろ側左右のパーツを中央の股の部分で接着します。パーツの表側に接着テープをつけます。
接着した状態です。裏側から見ています。
表側から見た状態です。
前後の接着
次に、袴をズボン型にするために、前後を接着します。
裏、表、左、右が非常にわかりにくいため慎重に進めます。最初に両脚の内側を接続しました。
右脚、左脚それぞれの前後を表面で接するように重ね、テープ接着します。
次に、両脚の外側を接続します。ここで一旦、クリップや洗濯ばさみなどで仮留めし、裏表を確認します。今見えているのは前後とも裏側です。
洗濯ばさみで挟んでいる両脚の外縁を、生地表側でテープ接着します。
両面テープで仮留めした状態で、表裏や接着箇所が合っているかどうかを再確認します。
問題なければ、アイロンをかけ、本接着します。
裏表をひっくり返して、表側から見た状態です。
サイズ確認
ここで、一旦サイズや形状を確認します。左の紙袴と丈は同じです。襞の開き具合が異なるせいかずいぶんと雰囲気が違うように見えます。
また、両脚の外縁の折りが入っていないせいで袴の形がほっそりしているように見えます。外縁にアイロンがけして折をつけました。
外側に折を入れた袴です。折りが入ってしっかりしたせいか、自立できるようになりました。
途中試着
ドールに試着してみました。丈がちょっと長いように見えますが、帯の位置がやや下にずれ落ちているため、最終的には5mmほど上に上がります。ほぼほぼOKですね。
ひもの加工
ひもは、前後に2本必要です。前が長く、後ろが短めです。
- 前ヒモ 46cm
- 後ろヒモ 30cm
- 幅 5mm(20mm幅の生地を4つ折りして)
前後のヒモに必要な長さ+1cmを幅4cmにて切り出します。
両側から5mmずつ折りたたみ、さらに端を5mm内側に折りこみ、接着しました。
もう一度折りたたんで、5mm幅にします。
前ヒモについては、中央の4cmほどは接着せず、開いた状態にしておきます。
前後のヒモができました。
腰板の加工
腰板も作ってしまいます。上辺が4cm、下辺5cm、高さ2cmの台形を厚紙で作り、表面に生地が見えるように布を巻きつけました。
内側が見えなくなるため、あまり体裁よく作ってはいません。ほとんど現物合わせで作りこみました。
台形の下辺左右に布の折り返しがありますが、ここは別途用意した生地を貼り付けます。写真は生地を貼り付ける箇所に両面テープをつけた状態です。
4X2cmを1cm幅になるように折りたたんだものを三角ができるように貼り付けます。
裏側から見た状態です。
両面テープと布用接着剤で固定しました。
ヒモの接続
前ヒモを袴に接続します。襞が開きやすいため、割りばしで挟んで固定した状態です。
表側に接着テープを貼り付けた状態です。
裏側にも同じように接着テープを貼り付けます。
テープ留めしていない中央部分を開き、袴側のテープに接着します。この部分は、中央が2mmほど凹んだ形をしていますので、袴の上端の形に合わせてヒモを変形させながら接着しました。
裏側も同じように袴の形状に合わせて接着していきます。
後ろ側は、最初に腰板にヒモを接着しました。
腰板の裏面に接着テープを貼り付け、腰板に合わせて袴の後ろ側表面を貼り付けます。
【写真】
袴にヒモがついた状態です。
アイロン仕上げ
袴の両側の縁に一旦アイロンがけを施し、折りを入れました。ですが、改めて見てみると折りが強すぎ不自然に感じます。
この部分は、折らずに、平面になるように再度アイロンがけしたいと思います。
すでにズボンの形になっているため、うまくアイロンがけができません。そこで、4cmX2cmほどの木の棒の先端に厚手のフェルトを巻きつけ、簡易の小型アイロン台を作りました。
袴の片脚をアイロン台に通し、アイロンをかける部分を平たく伸ばします。
アイロンがけした状態です。
仕上がった袴です。
まとめ
着物に比べて単純と思える袴ですが、作ってみると意外と難しいものがありました。
特に前側についてはデザインの再検討が必要です。紙製ではちょうどよいかと思っていた襞が、布ではかなり小さくこじんまりした印象になってしまいました。
また、直線が多い分作業的には楽なのですが、アイロンがけの際に生地を強く引っ張り過ぎたこともあり、個々の直線に緩やかなカーブがついてしまいました。
再検討したい箇所はかなり多く、次の試作にて改善したいと思います。
この作業で使ったツールは以下です。