ネットのどこかのサイトに、イラストに3Dモデルを使ってはいけないとか、使うといつまでも上達しないぞ、などの意見が交わされているページがありました。
果たしてイラストに3Dモデルを使った方がいいのか、使わない方がいいのか、自分なりに検討してみました。
クリップスタジオに標準でついている3Dモデル
ご存じのように、クリップスタジオペイント(以下クリスタ)には、人体の3Dモデルが標準搭載されています。
イラストに使ってはいけないものをわざわざ搭載するとは考えにくい気がします。 必要とされているから搭載していると考えるのが普通でしょうね。
便利機能
3D人体モデルは、本当に便利な機能だと思います。個人的には多用しています。
人体を描く際には、バランスをとるために当たりをつけます。当たりをつける必要がないほど描き慣れている人も当然いるでしょう。マンガ家さんの中には「キャラのどこからでも描ける」という人もいらっしゃいます。すごいですよね。
結局3Dモデルがあると、当たりをつけるのが楽なのです。
プロの方にしても、限られた時間の中で多量のイラストを描かなくてはならない場面などでは、大いにお使いになっていると想像します。
3Dっぽさ
3Dモデルは、かなり3Dっぽいところがあります。特に関節などは、そのままトレースしたり、真似したりすると気持ちの悪いデッサンになります。
少女のような柔らかな人体を描く場合、思うように関節が曲がってくれません。
体のサイズを膨らませたり、やせ細らせたりできますが、これもかなりおおざっぱで、3Dモデルの調整機能で調整してもなかなかイラストっぽいキャラになりません。
特に気に入らないのが手です。これって人間の手ですかね? ロボットの手ですよね。
よくないのは、おかしいと思いながらも3Dに頼り、違和感のあるデッサンを良しとしてしまうことではないかと思います。面倒くさいので、つい自分でも3Dに頼ってしまう部分がありますが。
イメージできない部分には重宝します
個人的には、3Dは当たりをつけるために用いるのが使い方としては妥当な気がします。
とは言うものの、イメージできない体のパーツなどは、結構トレースします。
特に丸みのある部分を斜めに見た場面などではパースがとりにくいため、3Dを積極的に活用しています。
一旦トレースして違和感がなければそのまま、違和感があればラインを調整します。
3Dモデルを使うと上達しない
3Dモデルに頼り切ってしまうと想像で描くスキルは伸びにくいかも知れません。では、もし使わないのであればどうするか? 普通に人体の標準サイズで当たりをつけると思います。
結局のところ、「上達」とは、当たり線を描かずとも、当たり線や描きたい絵をイメージできることな気がします。
手で当たりをとると、慣れるにつれ当たりを描かずとも、当たり線や描きたい絵がある程度イメージできるようになってくるような気がします。3Dを使うよりもこのイメージ化を身に着けるのが早いかも知れません。
ベテランマンガ家がスラスラとどこからでも描けるのも、描こうとしている絵がイメージできているからかも知れませんし、手や腕がイメージ通りに動くほど筋肉化しているからなのかも知れません。
3Dモデルを使っても使わなくても失いたくないもの
結局、3Dモデルを使うか使わないかは、その人の判断でよいと個人的には考えます。使うことで上達が遅くなったとしても、それもまた個々人の判断によると思います。
それはそうと、3Dモデルを参照したりしなかったり、トレースしたりしなかったりしてもイラストらしさは失いたくはありませんよね。
例えば、活き活きとした勢いのある線は、イラストがイラストらしいと感じられる大きな要因のひとつだと思います。3Dを用い、仮にトレースしたとしても、フリーハンドで描いたフレッシュな線で仕上げたいものです。