回転画像撮影システム更新

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マネキン回転画像撮影システムを更新し、自動撮影できる機能を盛り込みました。

360度回転画像撮影が自動化

きわめて単純なメカを用いて、360度の回転画像を自動撮影できるようにしました。

現在試験運転中で、メカ部分が丸だしの状態です。また、バックボードにも追加工を施しました。現在工事中です。

自動撮影動画

まずは、自動撮影の様子を動画でご紹介します。

動画を見ていただくと、どのようなシステムかが一目でわかると思います。

究極のローテクであり、素材のほとんどが木と紙(MDF)でできています。ターンテーブルの回転角も5度固定で、他の角度には簡単には切り替えられません。非常に自由度に乏しい装置です。

そもそも住宅の精度はあってないようなもの

折角作るんだったら、もう少しハードメタリックなシステムにすればいいのに。そう思われるかも知れません。結果的には、以下のような理由でこのくらいの精度にしました。

まず、撮影場所が自宅であることです。撮影スタジオのような作りのしっかりした建物であれば、精度の高いシステムも威力を発揮できると思いますが、自宅の場合はそうはいきません。

床にはフローリングが用いられています。このフローリングですが、見た目は平坦に見えるものの、定規を当ててみると、かなり大きな凹凸があることがわかります。数ミリくらいならまだいい方で、場所によっては1センチ近い高低差があります。

段差であれば一目でわかると思いますが、緩やかなカーブが連なっている凸凹面は、パッと見凸凹には見えません。

そんな床面を基準にして、その上に台を作り、さらにその上に木製のターンテーブルを置いています。そもそも土台からして精度に乏しいため、その上に高精度な装置を置いたところで、トータルでは期待した精度が得られない可能性があります。

木材には反りがある

ということで、どこもかしこも低精度であることを前提に設計を進めました。そもそも木材を使っている限り、多かれ少なかれ反りという問題がつきまといます。

床面の凹凸は修正しようがないため、この凸凹はシステムの土台で吸収するようにしました。何本か渡した垂木が水平になるように要所要所にスペーサを入れ、その上に9mmのベニヤを置いています。

一時的に水平が保てたとしても、時間が経つにつれ垂木にも反りが出てくるでしょう。個々の垂木の反りの差を吸収するために、9mm厚のベニヤをその上に置きました。ベニヤにもある程度の反りはあります。最終的にターンテーブル上に載せたマネキン等の重量がかかった状態で、ベニヤ面が平面になるように考慮しました。

ターンテーブルは、反りにより中心と周辺で5mm以上の歪みがあります。この歪みを補正するために裏面に鉄のバーを貼り付けています。それでも3,4mmの反りは残ります。残った反りは、ターンテーブル底面に取りつけた個々のキャスターの高さを変えることで調整しました。ターンテーブルに約10Kgのマネキンを載せた段階で12個のキャスターがベニヤに接地し、ベニヤ面がほぼ平面になります。

恐らく夏場と冬場で用いた板材の反りの程度が変わり、システム全体の歪みが変化するであろうと考えています。

そんなわけで、状況に合わせて加工したり調整できるよう、木と紙での造作となりました。

バックパネル

バックパネルは、今まで通りの白いプラダンです。これを連結して天井までの高さとしました。つまり天井そのものをバックパネルの一部として使うことにしました。

住宅の壁と天井は、ややベージュがかった色合いですが、撮影してみた限りは、さほど大きな問題ではないと考えています。

中央のパネルを取り外した状態

回転機構

ターンテーブルの下面には、5度毎にローラーを取り付けています。元の素材はナイロン製のスペーサですが、これを緩く締めた4mmのタップネジで固定し、モーターのアームが当たったときに回転し、アームがスムーズに移動できるようにしました。

アームは4mmのMDF材で、モーターの軸にフランジをつけ、ネジで固定しています。

モーターは、ウォームギアセットを内蔵した6rpmのDCモーターです。このユニットが一番高価でした。産地はヨーロッパのようです。

ターンテーブル下部のローラーとアーム

6rpmとは、1分間に6回転を意味します。つまり10秒で一回転します。10秒が早いか遅いかは実際に回転させてみないとわかりません。

手回しではマネキンが結構揺れることがわかっていました。モーターを使うことで、人間の手よりもスムーズに回せるのではないかという期待はあったものの、一定間隔で正確に回すことで、共鳴現象が発生する可能性も考えられます。共鳴するかしないかはマネキンのポーズや回転角の位置に依りますし、やはりやってみないことには何とも言えません。

そこでモーターの速度コントローラーも合わせて用意しました。この手のコントローラーは、モーターだけでなく、照明の明るさ調整にも使え、安価なものが数多く流通しています。今回用いたものは直流を矩形波にして、パルス幅を変えることで速度を制御する方式のものです。速度を変えてもトルクは変わらないというふれこみです。

モーター回転速度コントローラー

つまみを右に回すほど回転速度が上がります。左にいっぱい回すと回転は止まります。

大体1時の位置で、一回転18秒ほどになります。ターンテーブルを回し終えてから約12、3秒ほど時間を空けてからカメラのシャッターが切れます。

この12,3秒は、マネキンの揺れが収まるまでの待ち時間になります。今のところ共鳴もなく、かなり揺れが収まった時点での撮影ができています。

シャッター

カメラのシャッターは、カメラのレリーズをそのまま使いました。回転してきたアームが所定の位置に来るとボタンが押されるような機構です。

アーム先端が摩耗しないよう、アームが当たる部分にはローラーをつけました。このローラーは100円ショップで4個セットで売られている引き出し家具用のキャスターです。

カメラのレリーズをそのまま使用

355度で停止

さて、自動回転、自動撮影はいいとして、それだけだとターンテーブルが回り続ける限り回転撮影を続けてしまうことになります。

そこで、355度から0度の間で、モーターの回転が停止するよう、モーターのオンオフスイッチをターンテーブル横に置きました。

小さなスライドスイッチで、ターンテーブル側にスライドするとオン、手前側にスライドするとオフになります。ターンテーブルの側面にトリガーをつけ、この突起が当たったところで、スライドスイッチが切れ、モーターの回転が止まります。

このトリガーはターンテーブルの基準位置が355度を過ぎ、0度になる直前にオフになる位置に取りつけています。

自動撮影は別世界

一枚の撮影に約18秒なので360度72枚で約20分かかります。この作業を手で行うと考えると、少々憂鬱になってしまいます。5度ステップという細かな撮影は自動だからこそできることだと言っていいかも知れません。一旦システムを走らせたら、あとはほぼ放置で構いませんので、その間別の作業ができます。

また、撮影の負担が大きく解消されたことで、マネキン、衣装、ポーズ、カメラの設定に意識が集中できるようになると思います。

20分という時間は、何か特定の作業に集中するには中途半端に短く、少なからず慣れが必要です。それでも撮影の負担が削減されることで、気持ち的には大きな余裕が得られるように感じています。

予想していなかった問題としては、カメラの電池の消耗が異常に早いことです。連続して72枚、4つのアングルで、288枚になります。それに加えて、1アングルごとにお試し撮影を20枚程撮りますので、合計360~370枚程度になります。これだけの枚数だと電池もそれなりに消耗するようです。

自動撮影中にバッテリが切れてしまうと、撮影されないままターンテーブルが回り続けます。今のところ1回転ごとにバッテリを入れ替えて対処していますが、何ともかったるく、ACアダプタの必要性を感じています。

まとめ

システムのコンセプトについては、最初に紙の上で検討しました。そして、ある程度イメージがつかめたところで制作を進め、現物合わせをしながら調整し、組み上げていきました。一見するとちまちまと進めているように見えるかも知れませんが、確実に積み上げることで、ほぼ想定どおりの動作が得られています。

ローテクシステムには、この方法が比較的無駄なく、むしろ手っ取り早いのではないかと感じられました。

ちなみに1アングル72枚はなかなかに迫力があります。ファイルを並べると以下のようになります。

この枚数を見る限り、とてもとても手動で撮影する気にはなれません。今後の撮影は、やはりこのシステムなしにはちょっと考えられませんね。

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