イラストで線画を描く際に、線の交差点や、髪の毛の生え際などに黒ベタを入れることがあります。
教科書などのお手本を何気なく真似るうち、いつしか自分のスタイルになってしまった方もいらっしゃるかも知れません。この黒ベタにも明確な意味があります。
「デジタルツールで描く!服のシワと影の描き方」のコラムに、ちょっとした説明がありましたのでご紹介します。
黒ベタがある線画とない線画
左が一定幅の線だけで描かれたスケッチで、右は「線+黒ベタ」のスケッチです。


実は、左のスケッチは右をトレースしたものです。そのため、左右で若干テーストは異なりますが、ベタがあるなしの差は明確におわかりになると思います。
黒ベタの効果とその理由
ベタがあることで、キャラが浮き上がって見えると思います。
線と線が交差した部分に小さなベタを入れるだけでもキャラに立体感が出てきます。教科書の記事を読むまであまり意識することなく感覚的に線画にベタをつけていましたが、一体何故このような効果が生まれるのでしょう。
この小さなベタは、絵的には「影」を意味するそうです。
細い線がつらつらと連なっているだけだと退屈な印象なので、描き手としてはアクセントのつもりで入れることもあるかも知れません。ですが、描き手の意図とは別に、見る側としては「影」と解釈するのが自然です。
影があれば必然的に光を遮る立体物があるとみなし、見る側には全体が浮き上がって見えるはずです。つまり立体感が出るわけです。
黒ベタを入れる場所
黒ベタを「影」と考えると、入れる場所は自動的に決まります。
- 髪の生え際
- 後ろ髪
- 首と顎の境目
- 深いシワ
- 脇や股
- 重なり合う衣類の境界
などなど、通常落ち影を入れる部分に線画の段階で黒ベタを入れておくと、彩色前にイラストの雰囲気がある程度つかめるかも知れません。
意識して用いることで黒ベタをより積極的に活用したいところです。
外周線も太く描く
ついでですが、キャラの外周線も太めに描くことで、さらにキャラが際立ちます。
外周線を太く描く描き方は、イラストだけでなく、グラフィックデザインやテクニカルイラストレーションでも一般的な描き方であり、オーソドックスな技法です。
テクニカルイラストレーションは、人物ではなく「モノ」を描写するときの技法です。モノの形や立体構造を視覚的にわかりやすく表現するために、外周線に太線、内側の折れ線などに細線が用いられます。技術分野の技法なので描き方が体系化されています。
私の記憶と経験では、実際に学校で習うのは中学男子だけだったと思います。なので、女性にはもしかするとなじみの薄い表現なのかも知れません。
まとめ・・・外形線と影の一体化
イラストレーターによっては、外形線の一部をそのまま影レベルまで幅を広げて、影の面と外形線が一体化したような絵柄の方もいらっしゃいます。かなり強烈な印象のイラストですよね。
今までは、単にメリハリをつけたいと思い使っていた黒ベタですが、今後はもう少し効果を意識しながら使ってみようかなと思います。特にイラストの仕上げの段階では、折角メリハリをつけた線を、まずい色トレスで台無しにしてしまうことが少なからずあります。
黒ベタ効果を上手く生かし、インパクトあるイラストに仕上げたいものです。
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