プロの方のイラストを参考にしながら、大きな布のシワを想像で描いてみました。
参考作品とその分析
思いっきりシワを描いてみようと、プロの方(ゆーげんさん、Pixiv作品番号:39979583_p0【掲載当時】)の作品を参考に、100%想像でシワを表現してみました。
参考作品には様々な表現が詰まっていますが、特に目立つのはキャラが着ているコートの裏地のシワです。一体何を見ればこのようなシワが描けるのだろうと最初は思いました。ですが、テクニックを分析するにつれ、これはシワではなく、シワをモチーフにした文様のようなものだということに気づきました。
これに似たようなモチーフはちょっと思いつきません。例えば、このような薄手のカーテンやレースが風に揺れた状態を逆光で見たときに見られるシワや影(カーテン地が重なってできる影)に似ていると言えばそんな気もします。

表現のコツ
この表現を行うにはいくつかのコツというか、条件のようなものがあります。
- 大きな黒っぽい影の表現は、ペンの勢いと太さを調整する手わざ
- 質感が表現できる適切なテクスチャー
この2つですね。
恐らく見て描いたものではありません。写実的であることを捨て、手わざ(タッチ)で魅せているような絵です。加えて、独特のテクスチャーを使っています。複数のパターンを組み合わせて自作したテクスチャーかも知れません。
写実的であることを捨てるにはちょっと割り切りが必要かも知れません。何のために今まで懸命にデッサンしたり、現実のシワをできる限り忠実に再現しようとしてきたんだろう? そんな虚しさにとらわれてしまうかも知れません。
勝手な想像ですが、作者は現実をよく知っているからこそ、このような個性的でぶっ飛んだ表現が出てきたのではないかと感じます。
制作プロセス
布のシワにフォーカスして、制作プロセスを進めていきます。
布の部分のレイヤー構成は次のようになります。

外形線
おおよその形やシワのつながりなどがなんとなくわかる程度に外形線を引きました。この線は最終的には消してしまいます。

下塗り
外形線に沿って、下塗りします。羽ばたく布っぽさが出るようシルエットをちょこまかと調整しました。

テクスチャー1(ペーパーシワ)
布に張り付けるテクスチャーは2種類にしました。そのひとつがこのテクスチャーです。そのままシワとして使ってもいいパターンです。
このテクスチャーは、梱包用の少し柔らかな紙を団子状にしてから広げ、スキャナーでスキャンしたものです。
最終的にこのパターンを選びましたが、実際には何種類かのパターンを置いて確認しています。パターンのシワの向き(回転方向)やサイズも仕上がりに影響します。途中で何度か拡大縮小を行い、角度を調整しています。

テクスチャー2(砂目)
二つ目のテクスチャーは砂目です。

テクスチャー1+2
2つのテクスチャーでできるパターンはこのようになります。

シワ影
シワ影は、いつも使っている「水多め水彩筆」とぼかしツール「色混ぜ」を使って描きました。
布の中心を明るくしたいと思い、周囲に行くほど濃いめにしました。また、手でつかんでいる部分や、背中の後ろ側の急カーブで曲がっている部分などは、細かなシワになると想定して、シワの密度を高めにしています。外側に進むほどシワは大きくなっていくイメージです。

テクスチャーと合体するとこんな感じです。

明るさ調整
布の中心部分を明るくしたいと思うのですが、テクスチャーが全面を覆っていますので、テクスチャーの密度で明暗調整を行いました。
テクスチャーにグロス効果をあたえるための合成モード「オーバーレイ」レイヤーをテクスチャーの上に置き、中央部分に入れた色の濃さでテクスチャーの密度を調整しました。

オーバーレイの部分の塗りはこんな感じです。エアブラシ(やわらか)を使いました。

これまでのレイヤーを合体するとこんな感じです。

ブルー
濃い影の部分の印象を和らげることと、散乱光の照り返しを表現するための「ブルー」を影の部分に入れました。
シワ影レイヤー(マスクなし)だけのイメージはこんな感じです。

ブルーはシワの部分だけに入れたいので、本来なら、ブルーをシワ影でマスクすればいいことになります。ですが、シワ影は下塗りでレイヤーマスクされており、アプリ的には二重構造のマスキングはできません。
そこで、シワ影のコピーを作り、そのコピーの塗り色を「ブルー」に置き換え、その濃淡を調整しました。
シワ影にブルーを重ねた状態です。

これを下地に重ねると、こんな感じになります。

まとめ
最終的な構図を選ぶまで何枚かの構図を検討しました。
シワの表現が先にあり、それに合わせて構図を決めなくてはなりません。そうして検討を始めてみると、この表現がマッチする構図や構成が意外にも少ないことがわかりました。
できれば、他のイラストにも応用したいと思いますが、さっぱりイメージが湧きません。ぱあっと広がったハカマに使えるかな、と思ったりしますが、実際描いてみないと何とも言えません。
全面にフィーチャーするというよりも、さりげなく、隠し味的に使うのが乙なのかも知れませんね。

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