プロのイラストのトーンを参考にしたいと思った時、対象作品のイラストデータ(例えばJPEGやPING形式の物)をクリップスタジオのサブビューに表示させ、スポイトツールで色を拾ってしまうのが手っ取り早い方法のひとつだと思います。
スポイトで拾える色は見えている色だけです。下地の色はいいとして、影の部分に合成モード「乗算」が使われている場合、重ねた元の色はスポイトで拾った色とは異なります。知りたいのは、今見えている影の部分の色ではなく、下地の上に重ねた元の色です。
合成モードが乗算の場合、下地の色と見えている影の色から、重ねた元の色が簡単な計算式で求められます。
元の色を求める計算式
例えばキャラの肌の色を下地だと思ってください。(なんでもいいのですが)
この色をベースカラーとして、RGB=Br、Bg、Bbとします。
また、合成モードを乗算として影色を重ねた場合の影部分のカラーのRGB=Sr、Sg、Sb(Sはシャドウの頭文字のつもりです)とします。

ベースカラー(Br、Bg、Bb)と影部分のカラー(Sr、Sg、Sb)は、スポイトツールを使えば即わかりますよね。

ですが、レイヤーマスクがかけられている場合、重ねて塗った元の色は見えません。
計算式
乗算モードで重ねた影のオリジナルカラーのRGB=Xr、Xg、Xbとします。
Xr = (Sr/Br)X 255
Xg = (Sg/Bg)X 255
Xb = (Sb/Bb)X 255
で求められます。
例
例えば、上の説明図の中のベースカラーは(Br、Bg、Bb)=(255、200、200)です。
ベースカラーの上に重なった影色の部分は(Sr、Sg、Sb)=(187、147、147)です。
この二つの色は見えている色なのでスポイトで色が拾えます。上の説明図では、影のオリジナルカラーを見せていますが、実際のイラストではレイヤーマスクがかけられ、この色は見えなくなってしまいます。
影として重ねたオリジナルカラー=(Xr、Xg、Xb)は、
Xr=(Sr/Br)X 255 = (187 / 255) X 255 = 187
Xg=(Sg/Bg)X 255 = (147 / 200) X 255 = 187
Xb=(Sb/Bb)X 255 = (147 / 200) X 255 = 187
となり、重ねた色のRGBは、(187、187、187)であることがわかります。
(RGBは一般に整数で表現されるため、割り切れない場合、若干の誤差が生じる場合があります)
まとめ
実際のイラストは濃淡がついていますし、複数の色やテクスチャーが重なっていることもあるでしょう。それに、プロの方が合成モードを乗算にしているかどうかもわかりません。乗算ぽく見えても透明度を上げて下地をうっすらと見せている可能性もあります。
なので、スポイトで色を拾って自分のイラストに取り込んだとしても、ずいぶんと雰囲気の異なる絵になってしまうかも知れません。
リアル絵画の分析も大変かも知れませんが、デジ絵の分析は相当難易度が高いと感じます。いや、むしろ困難なのではないかと思えます。合成処理などは人間技ではありませんから。
合成モードを乗算と想定した上で、オリジナルカラーを一旦求めてみる、くらいに考えていただければと思います。
計算どおりにならないぞ!というような間違いがありましたらご指摘ください。
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