見たこともない衣装を描くのは至難の業
絵師の皆さんは、今までに描いたことのない衣装を絵にするとき、どうしてますか?
記憶を頼りに自由なイメージで描いているのでしょうか。それとも、ひたすら資料を集め、集めた資料を基に描いているのでしょうか。あるいは、実物を取り寄せ、ありのままの状態を忠実に描いているのでしょうか?
報酬が約束されているプロの方であれば、自分で購入したり、あるいはクライアントに依頼してお借りできる場合もあるかも知れません。ですが、趣味で描いている人がイラストのためだけに何着もの現物を購入するのは少々無理があります。
イラストを描き始めて3年目にもなって、私は未だに納得できる服のシワが描けていません。描けない理由は自分でもよくわかっています。ロクに観察もせず適当に描いてしまっているからなのです。
見たことも描いたこともない衣装を描くには、最初にどうしても情報収集が必要になります。それには、大きな手間と時間がかかります。同じ一日なら、イラスト制作に時間を割きたいところですが、下手をすれば、半日、一日かけても、満足な情報が集まらない場合もあります。
今着物を着たキャラを描いているのですが、やはり形とシワがよくわからず、そこで制作がストップしてしまいました。
着物を着たモデルさんの写真はネット通販サイトに行けばたっぷりあります。しかし、モデルさんのポーズやアングルはおおよそ決まっており、必ずしも欲しいポーズやアングルが簡単に見られるわけではありません。
ポーズ、アングル、そして着付けについても、簡単に入手できる情報には限界があります。そこで、一旦イラストを中断し、着物姿の27㎝ドールを用意することにしました。

衣装作りの効用
他のいくつかの記事でも述べているとおり、ミニチュアであっても、イラストを制作する上では十分に参考になります。
形とシワの状態を観察するのが目的なので、オリジナルの着物と言っても、できるだけシンプルな形状とし、縫い付けには糸を用いず、すべて手芸用のテープで行いました。
こうした作業はもちろん初めてのことです。多少器用なら早々に完成していたかも知れませんが、想像以上に時間がかかってしまいました。
そんな苦労のせいもあってか、作っているうちに着物の構造がだいぶ理解できました。それだけではありません。一着仕上げたことで、あたかもイラストを仕上げたような気持ちになっていました。
果たしてイラストそのものが上手く描けるかどうかはわかりませんが、対象物の構造が頭に入っていれば、描線にためらいが少なくなります。もちろん、写真に撮ればトレースもできます。すべてオリジナルなので、著作権の心配も要りません。

布で作る必要はない。型紙をテープで貼るだけでOK
衣装を作ることで構造が理解でき、筆運びはスムーズになります。
衣装は、わざわざ布で作るまでのことはなく、型紙を貼り合わせるだけでも十分です。いや、最低限、型紙を見て、頭の中で組み立てるだけでもいいかも知れません。
私は裁縫を一切やったことがないので、そもそも型紙の読み方がわかりません。なので、頭の中で組み立てるということは全くできないのですが、和裁洋裁の知識のある方であればさほど難しいことではないでしょう。
裁縫経験のない、あるいは経験の少ない男子にはハンディがあるでしょうし、人によっては裁縫そのものに抵抗があるかも知れません。ですが、ペーパーによるクラフトワークであれば、さほど抵抗はないのではないでしょうか。

まとめ・・・その衣装のデザインの気持ちがわかる
着物に続き、今、袴(はかま)を作っているところです。
袴にもいろんな種類があるようですが、今手がけているのは、馬乗(うまのり)袴という、中央が縫い付けられたズボンタイプのものです。
普通に立っているときは基本的にスカートと同じです。ただ、立っているときには袴の折り目がきちんと揃うので、フォーマル感が強く伝わってきます。
また、中央がつながっているため、着物の裾をまくり上げないと袴がはけません。まくりあげた裾は、お尻側にまとめて帯にひっかけるようです。そうするとお尻側が少なからず膨らむことになります。
そんなところが袴姿の格好良さだと思うのです。何となくですが、袴のデザインの気持ちが理解できるような気がするのです。
結果的に見る人に感動を与えられるイラストが描けるかどうかはわかりませんが、無理解のまま描いていたら、説得力の乏しい絵になってしまいやすい気がします。
構造を理解して描いた絵であれば、その衣装の形にしても一本のシワにしても、より自然で、一番恰好のよい形やキャラの姿を伝えることができるような気がします。

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