ドルフィードール素体の関節が緩い
和装ポーズ撮影用に入手したドルフィードール素体(NEW-EB、Bタイプ)は、中古のせいもあってか関節のほとんどがゆるゆるの状態でした。
ドール自身でかろうじてポーズはキープできています。ですが、一か所動かすと他の部分が連動して動いてしまうこともあり、ポーズをとらせるのは容易ではありませんでした。また、何かを持たせたり、衣装を着せたりした場合、姿勢が大きく崩れる可能性があります。
そこで、接着剤を用いて各関節が硬くなるよう調整してみました。
関節を硬くする方法
今回、関節の緩み調整に用いた方法は、関節部分への接着剤の塗布です。
用いた接着剤は、二液性エポキシ接着剤と木工用ボンドです。関節機構は、大きく分けてボール関節と軸関節の2種類あります。それぞれの関節機構に対し次のような方法を用いて硬くなるよう調整しました。
- ボール関節:ボールサイズを大きくするためのボール面へのエポキシ接着剤の塗布
- 軸関節:軸部分の動きを抑えるための軸周りへの木工用ボンドの流し込み
では、具体的な内容を見ていきましょう。
調整プロセス
ドルフィードール素体の分解
まずは素体の分解です。関節機構がどのようになっているのかを実際に見てみました。

関節機構の確認と分類
主な関節機構には、ボールを中心として、どの方向にも自由に動かせるボール関節と、車輪のように軸があり、軸を中心とした一方向の回転のみができる軸関節の2種類があります。
首の部分は少し特殊です。この部分は水平方向の回転のみです。実際には前後の回転ができる機構を持っているのですが、首とヘッドの取り付け部分にスキマがほとんどなく、実質的には水平回転しかできません。
ボール関節
ボール関節は、体部と股関節の4か所に用いられています。機構は、ボールとボールを受ける凹面の容器で構成されています。
ボール表面は多面体になっており、面ではなく、多数の点で容器の内側と接し、ほどよい摩擦が得られるように工夫されています。
ただ、この多面体の角が減ってしまうと、摩擦は弱まり、ドールは骨なしのようにぐにゃぐにゃになってしまいます。

軸関節
軸関節は一方向のみの回転機構です。体部、首以外の12か所にこの機構が用いられています。
一方向の回転ではあるものの、取り付け軸とのコンビネーションで、全方向に動かすことが可能です。

接着剤の塗布
機構によって使う接着剤と使い方を工夫しました。
ボール関節へのエポキシの塗布
まず、ボールが露出できる部分については、ボールを露出させ、球面全体にエポキシ接着剤を薄く塗布しました。使い方としてはパテと同じです。この接着剤は、プラスチック(塩ビやPPはダメ)対応とのことですが、薄く塗った部分は乾いてもペラペラと剥がれます。
強力に接着させたい場合は、素材をよく洗い、表面をやすり掛けするなどの下準備が必要かも知れません。今回の場合、スキマを埋めるのが目的なので、軽く汚れをふき取る程度にしました。
用いたエポキシ接着剤は二液性速乾タイプで、15分ほどで表面が乾き、40分ほどで使用可能と説明されています。ですが、内部まで乾燥させるのに、念のために24時間待ちました。こうした用途には、短時間で乾かせるUV硬化タイプか、瞬間接着剤の方がベターかも知れません。

ちなみに、シアノアクリレートという物質を主成分とする瞬間接着剤の多くは、プラスチックは接着しません。なので、今回のような目的には適しているかも知れません。機会がありましたら瞬間接着剤も試してみたいと思います。
ボール表面にエポキシ接着剤を薄く伸ばした状態です。この状態で乾燥させますした。

大腿部については、ネジ2本で固定されています。

ネジを取り外すことで、ボール部分を取り出せると考えたのですが、思ったように分解できません。

膝側を観察したところ、接着剤で固定されているように見えました。大腿部はこれ以上バラすことができないようです。

そこで、ボールと容器がつっくかないようピック2枚で容器を広げ、乾燥したら角度を変えるを数回繰り返して接着剤を塗布しました。

軸関節への木工用ボンドの流し込み
軸関節はどのパーツもバラすのは難しいようです。そこで、軸関節全体に木工用ボンド(水性、酢酸ビニル樹脂)を流し込んでみました。

乾く前に、関節部分を数回を動かし、軸の中に接着剤が染みるようにしました。大きくはみ出した接着剤は、ティッシュや綿棒でぬぐい取りました。

乾燥後は、このように透明になります。

関節を動かすと、接着剤の一部がはがれ、動いてしまうのですが、この接着剤は乾燥後も若干弾力性があるためか、適度な摩擦が生じます。
この方法は、パーツをバラさずに行える点がよいですね。

取り付け軸
緩くなった取り付け軸があったため、軸に直接木工用ボンドを塗布してみました。
乾いて透明になった状態です。効果は抜群で、緩んでいた軸がしっかりと固定されるようになりました。

結果
ボール関節
ボール関節については、ボール表面にエポキシを塗布する方法を用いました。
関節部分には確かな抵抗が生じ、動かすたびにギギギと音を立てます。以前のようなグニャグニャ感はありません。
軸関節
軸関節については、軸部分が外せないため、軸回りの空間を埋めて抵抗を増やす方法を用いました。
ボール関節に比べると若干効果は薄いのですが、それでもクルクルと回っていた関節が、それなりに力を加えないと動かない状態になりました。
全体的な変化
全体の関節がしっかりしたことを示す例としては、全く支えなしにしっかりと自立するようになったことでしょうか。改善前は、関節が柔らかすぎるせいで、バランスをとるのが結構大変でした。
何となく、リアリティが強まったような気がします。

まとめ
同じドルフィードールでも、SDと呼ばれるスーパードルフィーやDDと呼ばれるドルフィードリームといった高級ドールには、関節の調整などに関する細かなマニュアルが用意されているようです。しかし、ドルフィードール素体については、調整に関する記事が見当たりません。
オビツドールについても同様に調整マニュアルは見当たりません。素体は、購入者がカスタマイズすることを前提としているからかも知れません。
当初は接着剤を用いることに大きな抵抗がありました。そもそも関節とは可動させるための機構であり、本来は、潤滑剤を流し込むべき部分です。もし関節がガチガチに固定されてしまったら、アクションドールは全くアクションできないただの置物になってしまいます。
ただ、接着剤の多くは、プラスチックにつきにくい性質を持っています。例外としてはプラモデルに使う接着剤があります。この接着剤は、プラスチックを溶かして接着するため、接着と言うよりも溶着と言えます。他の付着させるタイプの接着剤は、プラスチックの表面に貼り付いているだけで、内部にまで沁みているわけではありません。
数種類の接着剤を用意し説明をしっかりと確認しました。本来であれば、影響のない部分で一度試してから使うべきでしょう。今回は様子を見ながらぶっつけ本番で作業しましたが、結果は良好でした。
今回の実験的な方法が参考になれば幸いです。よりよい方法があれば、是非ご教授ください。
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