クリップスタジオペイント(以下クリスタ)を使っていると、気がついた時にはそのデータ容量が巨大化していることがあります。
自分で容量が増やせるハードディスクやクラウドであれば問題は少ないのですが、レンタルサーバーなどでは、ひとつのファイルのアップロードサイズに制限があります。
制限を受けて初めて、データを小さくしようと躍起になることが少なくありません。ですが、なかなか思うようにはいきません。
そこで、クリスタでサンプルファイルを作り、どうしたら効率よくファイル容量を小さくできるか、いくつかの方法を試してみました。結果として、次の4つが効果的と考えられます。
- 解像度を下げる(ただし画質が極端に低下するため、積極的には勧めない)
- レイヤー数を削減する(不要なレイヤーを削除したり、複数のレイヤーを統合する。ただし、レイヤー個別に行えていた編集はできなくなる)
- すべてのレイヤーを新規ファイルに移し替える(容量削減効果は限定的)
- ファイルをフォトショップ形式にして、圧縮ファイル化する
容量縮小化実験
実験方法
クリスタに背景イメージを読み込ませ、それを複数レイヤーにコピーし大容量ファイルを作ります。
レイヤーを統合、ヒストリーの削除、フォトショップフォーマットやクリスタオリジナルファイルをZIP圧縮するなどのいくつかの容量縮小化を行い、その縮小化の度合いを確認します。
条件
- 使用したアプリケーション:クリップスタジオペイントVer1.10.12
- ハードウェア:MacPro(OS:High Sierra)
- ZIP圧縮は、MacOSの標準機能として備わっているものを使用
新規ファイル
新規ファイルのキャンバスを、A4サイズで解像度350dpiとしました。この白紙状態で、ファイルサイズは約300KBです。

イメージデータの配置
次に、この白紙の上に、新しいレイヤーを作り、クリスタに標準で用意されている海の背景を貼り付けました。このイメージ一枚だと、ファイル容量は約11MBになります。

次に、レイヤーをコピーし、同じ内容のレイヤーを10枚にしました。この状態でファイル容量は約84MBです。単純に10倍ではありませんが、レイヤーが増加することで、容量は一気に増加します。

レイヤーの統合
10レイヤー → 1レイヤーへの統合による効果
最初にレイヤーの統合を試してみました。
コピペで作った10レイヤーを統合して、1レイヤーにまとめたところ、1レイヤー時と同じ、約11MBに戻りました。
統合可能なレイヤーをできるだけ統合することで、レイヤーの枚数にほぼほぼ比例するほどの大きな容量削減が期待できる
イメージデータの編集による容量増加と削減方法
ここで一旦、背景イメージを面積4分の1サイズにしてから、また元のサイズに戻しました。経験的に、線や面を描いたり消したりすることで、じわじわと容量が増えると感じていましたので、それを実際に数値として確認してみることにしました。
背景イメージを縮小すると、ファイル容量は、約11MB → 約7MB に縮小します。

ところが、この絵を元のサイズに戻すと、容量は元の約11MBではなく、約15MBになってしまいました。
これまでのヒストリーデータが残っているせいではないかと考え、ヒストリーデータを削除しましたが、容量そのものは15MBのままでした。
この状態で、レイヤーをコピーして10レイヤーとしたところ、ファイルサイズは約100MBとなりました。編集作業を行うだけで、データ容量はじわじわと増加する可能性があることが確認できました。
フォトショップ形式+ZIP圧縮
フォトショップフォーマット化による容量の変化の確認
約100MBとなったクリスタ形式のデータですが、フォトショップ形式にしたところ、容量は約128MBと3割増しになりました。
ZIP圧縮によるファイル容量の縮小化
次に、クリスタ 形式とフォトショップ 形式 それぞれをZIP圧縮したところ、次のような結果になりました。

- クリスタ形式 約100MB → ZIP圧縮 約97MB (ほとんど圧縮されません)
- フォトショップ形式 約128MB → ZIP圧縮 約80MB (大きな圧縮率が得られ、容量はクリスタデータよりも小さくなります)
- クリスタとフォトショップ形式は100%互換ではないため、クリスタ特有の処理を行った場合などは注意が必要です。
クリスタ形式をフォトショップ形式に変換すると容量は大きくなる可能性があるが、フォトショップ形式のデータをZIP圧縮することで、データ容量の大きな削減が期待できる
画像解像度の変更
次に画像解像度の変更による容量の変化を確認しました。
350dpi → 300dpi
オリジナルの解像度である350dpiから300dpiに変更したところ、データ容量は、約80MBに縮小しました。
350dpi → 240dpi
次に240dpiまで解像度を下げたところ、データ容量は、約57MBまで一気に縮小しました。
解像度を下げることで、ファイルサイズは大きく縮小できることが確認できました。
画質の確認
ファイル容量を小さくする代償として、画質の低下があります。
レイヤー統合の場合、一度統合したレイヤーは元に戻せないため、レイヤー別の編集ができなくなります。しかし解像度は変わりませんので、画質の低下はありません。
次のイメージは、各解像度の画質の違いがわかるように3種類のイメージを横に並べてみたものです。少々ぼんやりとしたイメージなので、少々わかりにくいのですが、特に斜め線などは、解像度が下がるにつれ、線が千切れたようになります。
細いラインで微妙なカーブの描かれるキャラなどでは、見るに堪えない状態になってしまう可能性があります。

画像解像度を下げることで、データ容量は大きく削減できる。しかし、画質の劣化は激しく、容量削減の方法としては積極的には勧められない。
編集の残骸(?)除去
先に記載した内容の繰り返しになります。背景イメージを一旦縮小し、元に戻したところ、元データよりも容量が大きくなってしまいました。
ただし、その原因はヒストリーデータではなく、恐らく画像編集を行った際に発生した何らかの残骸が残っているからではないかと想像されます。
そこで、白紙の新規ファイルを作り、すべてのレイヤーをコピペしてみました。(「データサイズ確認.clip」の全レイヤーを「データサイズ確認2.clip」に貼りつけ )
大元のファイルサイズである約84MBには及びませんが、若干の縮小が認められました。
データサイズ確認.clip (100.5MB) → データサイズ確認2.clip (97.5MB)
今回のデータでは効果は薄いものの、編集量もレイヤー数も多い通常のイラストデータで試してみる価値はあるかも知れません。

すべてのレイヤーを新規ファイルに移し替えてみる。多少の容量削減が見込める。
まとめ
自身の作品や生データをサーバーにアップしようとしたところ、容量が大きすぎてアップ出来なかった経験は一度や二度ではありません。
その都度、だましだまし、いろいろな方法を試してきましたが、どうしても上手くいかない場面では、解像度を下げてしまったこともありました。今思えば、解像度は最後の最後の手段であり、できる限りそれ以外の方法を試すべきだったと反省しています。
いずれにしても、作画は作画、データ容量など気にせず、思いっきり描いたり消したりを重ねて仕上げたいものです。
今回記載した方法以外にも、ちょっとした工夫で大きな効果が得られる方法があるかも知れません。新たな方法を思いつき次第、改めて確認実験を行い、ご紹介したいと思います。
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