「恋声」や「バ美声」など、シンプルで優れた機能を持つフリーウェアのボイスチェンジャーアプリがいくつか配布されています。
私は「恋声」を気に入って使っていますが、どうしても上手く変換できない場合は、ボイスチェンジ機能を持ったボーカルエフェクターアプリ「VocalShifter_le」を併用しています。
この二つのアプリをチャンポンで使う場合には、変換後の音声が一致するよう、それぞれのアプリの設定値を合わせなくてはなりません。
この記事では、フリーウェアのボイスチェンジャー「恋声」と高品質なボイスチェンジが可能なボーカルエフェクター「VocalShifter_le」の設定値の換算について説明します。
「恋声」と「VocalShifter」の設定に関して
「恋声」、「VocalShifter_le]とも、ボイスチェンジ機能の設定は、ピッチ(音の高さ)とフォルマント(声質)の2つの数値を組み合わせることで行われます。
恋声の設定
「恋声」では、ピッチとフォルマント共、次の二種類の設定値が使われています。
メインは単位が%のもので、これは音の高さの変化量を表しています。もうひとつは、その右側の( )内に記載された数値で、これは音程を表しています。
以下、ピッチを例に説明します。
入力と出力でピッチが同じ場合、値は100%です。100%=1倍です。ピッチを200%にするということは2倍にするということです。要するにこの%は、周波数の変化のことです。
例えば入力音が周波数1KHzで、ピッチ=200%の場合は、出力の周波数は2KHzとなります。ピッチが150%なら出力は1.5KHz、ピッチが50%なら出力は0.5KHz=500Hzとなります。
次に、%値の右にある( )の数値ですが、これは音程(12音音階:1オクターブに半音が12個並んだもの。ピアノの白+黒鍵盤数に相当)を表します。この数値の+1は鍵盤1つ上という意味になります。+12だったら、鍵盤12個分上の音なので、1オクターブ上になります。
音程と周波数は比例しません。音程は人間が聞いて感じる音の高さであり、周波数は音声の機械的な数値です。この二種類の数値の対応については、別の記事にて説明します。
VocalShifter_leの設定
「VocalShifter_le」で使われている設定値の単位は音程(12音音階)のみです。
「恋声」でも触れましたが、12音音階は、1オクターブに半音が12個並んだもので、ピアノの白+黒鍵盤の数に相当します。
変化前の音程を0とすると、1オクターブ上は、鍵盤12個上の+12となり、1オクターブ下は逆に、鍵盤12個下であるー12となります。
「VocalShifter_le」では、音程をより細かく設定ができるよう、鍵盤1つ分の1半音を100分割したセントという単位が使われています。鍵盤一つが100セントという値になります。
つまり、1オクターブ上は、+12 X 100セント = +1200セント となります。
恋声とVocalShifter_leの設定値の換算方法
恋声と同等の変換をVocalShifter_leで行う場合は、恋声の( )内の値(鍵盤数)を100倍したものを用います。
ピッチに関するいくつかの典型的な設定例についての対応表です。
恋声 [ %(音程)] | VocalShifter_le [ cent ] | |
入力と出力の音声が同じ | 100(0) | 0 |
出力が入力の1オクターブ上(男声→女声) | 200(+12) | 1200 |
出力が入力の1オクターブ下(女声→男声) | 50(-12) | -1200 |
出力が入力の半オクターブ上(男声→ちょっと ボーイッシュな女声) | 141(+6) | 600 |
出力が入力の半オクターブ下(女声→中性的な男声) | 71(-6) | -600 |
出力が入力の全音上 | 112(+2) | 200 |
出力が入力の全音下 | 89(-2) | -200 |
出力が入力の半音上 | 106(+1) | 100 |
出力が入力の半音下 | 94(-1) | -100 |
まとめ
「恋声」、「VocalShifter_le」とも、ボイスチェンジ機能の調整に用いられる変数は、ピッチとフォルマントの2種類です。どちらのアプリで変換しても同様の音声が得られるのが理想ですが、アルゴリズムやフィルターの違いからか、設定値を合わせても音質に微妙な差が出てしまいます。
そのため、「VocalShifter_le」で手直しが必要な場合は、ひとつのコンテンツで使われている「恋声」の音声データは、すべて「VocalShifter_le」で再変換しています。
その際、「恋声」で得られた設定値は、数値変換して「VocalShifter」でそのまま使っています。自分で言うのもおかしいのですが、「恋声」で使った設定値は完成度が高く、「VocalShifter」で再調整する必要性は全くありません。(「しょぼいオヤジ声を個性的な声に変えるボイスチェンジャー設定12選」参照)
今後、より優れた新しいアプリが出てきても、原理さえいっしょであれば、「恋声」で厳選した設定値が有効活用できるはずです。