タブレットのペン先が減らないペーパーライクシートを探す(第1弾)

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この記事は、3段階の実験のうちの第1段階のものです。現在第3段階に入っており、毎回改善していますので、できるだけ最新記事をご参考にしてください。

「『ペン先が消耗しにくい』ペーパーライクシートを貼ったところ、描きやすくはなりましたが、以前よりも減りが早いような気がします」

「タブレットのペン先を金属製に変えたら、ペン先が全く擦り減らなくなりました。でも、ペンに負担がかかって、ペンが壊れてしまいました」

「タブレット、ペーパーライクシート」とか、「ワコム、ペン先、減らない」などのキーワードで検索すると、描きやすさを求め、ペン先の消耗と戦うイラストレーターたちのこうした叫び声が目に飛び込んできます。

この2年、ペンタブを使ってイラストを描いてきましたが、私も同じ悩みを抱えてきました。

一部のペンでは、ペン先だけを金属にすることで問題解決ができているようですが、それ以外のペンについては、満足な解決策が見当たりません。

精密部品だけに、メーカーの替え芯を使うのは止むを得ないとして、もう少しペン先が擦り減らないペーパーライクシートというものはないのでしょうか?

そこで、一般的に市販されているペーパーライクシートの代用品になりそうなものを探してみました。小学校の硬筆習字で用いられる塩ビの下敷きがそこそこ使えそうな感触を得たのでご紹介します。

ペーパーライクシートはまるで「紙やすり」

イラストで線画をしっかり描くには、タブレットの表面は紙に近いのが理想です。

タブレットの表面がツルツルした状態では、ペン先が上手くコントロールできず、思うような軌跡で線が引けないからです。

使用しているペンタブレットはワコム製のPTK-650という機種です。

元々、このペンタブには紙の摩擦に近いざらざらしたシートが貼り付けられており、指先でこすると、「紙」というよりも「紙やすり」のように感じられます。

そのせいもありペン先は異常な早さで擦り減ります。作画の内容にもよりますが、大体10時間程度でペン先の形が変わってしまいます。

まだまだ使えそうなペン先もあります

タブレットの表面も削れている

ペン先も擦り減りますが、ざらつき加工されたタブレットシートもまた擦り減ります。

最初のシートは、気がついた時にはツルツルになっており、ペン先のコントロールが思うように効かない状態になっていました。

もともと器用ではないため、道具だけでもよい状態にしておきたいと思うものの、ペン先とシートの両方を頻繁に交換するとなると、経済的な負担が小さくはありません。

「ペーパーライク」とはどういう状態のことか

そこで改めて、「ペーパーライク」について考えてみました。

何枚かの紙が重ったスケッチブックに絵を描くときには、硬いプラスチックの下敷きなどは使いません。

紙表面のざらつきに加え、重なった紙の柔らかさが鉛筆の先を支えてくれることで適度な「抵抗感」が生じ、それが描きやすいと感じられるからでしょう。

そこで、「描きやすい紙」とは、

描きやすい紙 = 適度な抵抗感 = 表面のざらつき + 表面の柔らかさ

という仮説を立ててみました。

つまり、ペンを動かしたときの「適度な抵抗感」は、「表面のざらつき」と「紙の柔らかさ」の組み合わせであると仮定しました。

既存のペーパーライクシートの原理(仮説)

ペーパーライクシートは、この「適度な抵抗感」を得るために、表面にざらつき加工を施して「紙っぽさ」を出しているということになります。

適度な抵抗感 = 表面のざらつき + 表面の柔らかさ

「適度な抵抗感」を「表面のざらつき」だけで実現しようとしているため、かなり無理をしているのかも知れません。

「表面の柔らかさ」による「適度な抵抗感」という仮説

そこで、「表面の柔らかさ」に着目してみました。

仮に表面がやや滑り気味であっても、素材が柔らかなら「適度な抵抗感」が得られるのではないか。

うまくすれば、ペン先の擦り減りを抑えることができるのではないか、という仮説を立ててみました。

小学校で用いられる硬筆用の塩ビの下敷き

そこで、子供たちが幼いころに使っていた、適度な柔らかさのある塩ビ製の下敷きをタブレット上に置いてみました。

本来、文字を書きやすくするのが目的の道具であり、タブレットで使えないとは思えません。

用いたペン先

実験で使用したペン先は「ポリアセタール」という標準タイプのものです。

ペン先には次のようないくつかの種類があります。

  1. ポリアセタール:標準芯と呼ばれている黒いプラスチックの芯
  2. フェルト:やや摩擦が感じられる柔らかなフェルト芯
  3. エラストマー:ペン先がゴム素材の芯。ペン先で摩擦を作り出しているため、タブレット面がツルツルでもある程度の摩擦が得られる

この3種類がワコムの代表的なペン先になります。

塩ビ製硬筆習字用下敷きによる描き味

標準の「ポリアセタール」ペン先と塩ビ製の硬筆習字用下敷きとを組み合わせて10時間程度線画を描いてみました。

感触としては、ペン先がシートに吸い付いたかのようなモッタリとしたものでした。

3の「エラストマー」というペン先を使ったことがある方であればわかると思いますが、この「エラストマー」に似た抵抗感があります。

ただ、ペンを強く押した場合は極端に滑りにくくなり、軽く押さえた場合は、ツルリと滑るという独特の変化があります既存のペーパーライクシートのように、押さえ方に関わらず安定した摩擦があるというわけではありません

硬筆習字用下敷き uni NK-250

量販店などで比較的容易に入手できる硬筆習字用下敷きは、2種類あります。ひとつはuni NK-250という、厚みが1.8mmのものと、uni NK-150という厚みが0.8mmのものです。どちらもサイズはB5になります。

それぞれの数字は、品物の金額です。NK-250の定価が250円で、NK-150が150円です。

一般的なペーパーライクシートの金額に比べても、気が抜けるほどお安い価格です。

uni NK-250 をワコムタブレットに載せた状態

NK-250は厚みがあるため、かなり柔らかく感じられます。

ペン先はシートに吸い付くような感触が得られ、安定したペン運びができます

ただし、表面のつや加工のせいでやや滑りやすく、その点はちょっと残念なところです。

硬筆習字用下敷き uni NK-150

NK-150をワコムタブレットに載せた状態

NK-250の表面がツルツルに加工されているのに対して、NK-150の表面はマットです。

マットではあるものの、特にざらついた感触はありません。あえてこのようなつや消し加工を施したのか、素材が薄いので、あえて無加工のままなのかはわかりません。

実際にペンを走らせると、それなりに柔らかく、NK-250同様にペン先が吸い付くように感じられました。また、表面がマットなこともあり、NK-250よりも滑りにくいと感じられました。

使用20時間後のペン先の状態

NK-150をタブレットに置いた状態で、20時間程度使ってみました。

20時間使っても、特にペン先の擦り減りは感じられません。次の写真は、実際の20時間後のペン先の状態です。

NK-150を敷いて20時間使用したペン先

ペン先が全く減っていないわけではありません。

小さなプラスチックのペン先を塩ビシートの表面に何時間もこすりつけているわけです。いくら表面が柔らかいとはいえ、全く擦り減らないわけはありません。

ただ、ペーパーライクシートと擦り減り方がまるで違います。

こちらは、従来のざらざらしたペーパーライクシートで20時間使ったペン先の状態です。

ペーパーライクシートで20時間使ったペン先の様子

元々丸かったペン先の頭がごっそりなくなっているだけでなく、縁には、やすりでこすったようなバリが発生してます。このバリは、写真ではわかりにくいのですが、白っぽい色をしています。

片減りしやすいことで、ほんのちょっと擦り減っただけで、引っかかりやすくなってしまいます。

硬筆習字用下敷きの場合、擦り減りが少ないことに加えて、先端の丸い状態を維持したままマイルドに擦り減っていくようです。

つまり、ゆっくりと削れてはいくものの、描きやすさはそのままキープされるわけです。

柔らかなシートがペン先を包みこんでくれるため、筆圧が分散され、スパッとカットしたような先端の削りが起きないのではないかと考えられます。

タブレット表面が硬い場合と柔らかい場合のペン先とシートの模式図を示します。あくまでも状況から推測したイメージであることをお断りしておきます。

硬い表面と柔らかい表面のペン先にかかる圧力の模式図

硬筆習字用下敷きをペンタブに用いた場合のメリット・デメリット

硬筆習字用下敷きをペンタブに使った場合のメリット・デメリットを上げてみます。

硬筆習字用下敷きをペンタブに用いた場合のメリット

  • 価格が安い
  • ホームセンターの文具売り場等、比較的どこでも手に入る
  • ペン先が減りにくい。特に片減りしにくい
  • ペン先の交換頻度が少なくなり、経済的
  • シートの柔らかさ(および表面のシボ)によりある程度の抵抗感が得られる

硬筆習字用下敷きをペンタブに用いた場合のデメリット

  • 「柔らかさ」=「抵抗感」というよりも、どちらかというと引っかかり感が強い(感触としてそう感じる)
  • サイズが選べない
  • やや厚みがある
  • タブレットによっては、使えなかったり、反応しにくくなるものがある
  • 特に固定するための仕組みはないので、両面テープなどで自分で固定が必要

まとめ

ポジティブな面

硬筆習字用下敷きをタブレットシートとして用いることで、ペン先の「エラストマー」に似たような「抵抗感」が得られました。

また、一般のペーパーライクシートに比べて擦り減りは少なく、先端の丸みがある程度維持されるため、多少擦り減っても極端に描きにくくはならないことがわかりました。

もし、この下敷きを試してみたいということであれば、適度な柔らかさがあり、滑りが抑えらえたマットな表面のNK-150がお勧めです。ペン先の減りが大きく改善される点だけは保証いたします。

ネガティブな面

また、一般的な「ペーパーライク」の感触とは別物です。描きやすいと感じる人もいれば、描きにくいと感じる人もいるでしょう。

特にペンを強く押さえた場合と弱く押さえた場合での滑りが全く異なります。強く押さえると途端に滑りが悪くなり、ちょっと力を緩めるといきなりツルリと滑ることがあります。

あくまでもある程度のペーパーライク感であり、まだまだ改善が必要と感じています。

硬筆習字用下敷きはあくまでも筆記具用です。タブレットに用いた場合、現時点ではまだわかっていない問題が発生する可能性もあります。

当実験は長期に渡り継続して行う予定です。現在、数種類の下敷きでトライアルしていますので、新たな結果も是非ご参照ください。

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