タブレットの「読み取り分解能」は、絵にどう影響するのか?

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タブレットの「読み取り分解能」は、絵に影響するのか?

「読み取り分解能」が異なる2種類のWacomタブレットを用い、性能の違いが絵にどのような影響を与えるか確かめてみました。

異なる性能を持つ多くの種類のタブレットが販売されています。液晶タブレットとペンタブレット、タブレットのサイズなどはその違いが顕著で、誰にでも判断できる違いですが、今回着目した「読み取り分解能」は、見た目ではわからない仕様のひとつです。

「読み取り分解能」は、高精細であるほど高機能であることはわかりますが、結局のところ絵にどれくらい影響するのかが重要だと思います。果たして「読み取り分解能」の違いはどれほど絵に影響を与えるのでしょうか。

実験に用いた2種類のWacomタブレット

今回描画テストに用いたのは下記2種類のWacom製ペンタブレットです。


Intuos CTH-690

  • 読み取り可能サイズ : 216mm X 135mm
  • 読み取り分解能 : 0.01mm
  • 価格 : ¥21,384
  • 筆圧レベル : 2048レベル

Intuous Pro Medium (PTK-650)

  • 読み取り可能サイズ : 223.5mm X 139.7mm
  • 読み取り分解能 : 0.005mm
  • 価格 : ¥35,794
  • 筆圧レベル : 2048レベル

タブレット上の読み取りエリアのサイズはほぼ同等、筆圧レベルも同等で、主は性能差は「読み取り分解能」になります。この「読み取り分解能」の差は数値的には2倍あり、価格にも差がつけられています。

最初に使用していたIntuos CTH-690のタブレット面に大きな傷がついてしまったことから、今回グレードが上のIntuous Pro Mediumに機種変更を行いました。「読み取り分解能」が倍になることで、どんなに絵が描きやすくなるだろうと使う前からワクワクしていました。

タブレットの「読み取り分解能」の差による絵の変化

結果から述べますと、タブレットの0.01mmと0.005mmの「読み取り分解能」の差は、絵にほとんど影響を与えません。

0.01mmのタブレットから0.005mmのタブレットに切り替えた際、感覚的にはその差は全く認識できませんでした。その時は、性能の違いがわからないほど自分のスキルが未熟なのだろうと思ったのですが、同時に、この性能差は本当に実感できるものなのだろうか、という疑問を感じました。

今回用いた2機種の間に全く差がないわけではありません。ほんのわずかではありますが、現実に線の幅が変化するのです。

例えば、同じ3pxのペン幅で描いた線は、「読み取り分解能」0.01mmの機種の方が「読み取り分解能」0.005mmの機種に比べわずかに太くなります。

では、実際にそれぞれのタブレットを使った時の線の変化を見てみましょう。

タブレットの「読み取り分解能」の比較に用いた4種類の線

2種類のタブレットの「読み取り分解能」の比較には、次の4種類の線を用いました。アプリケーションには、クリップスタジオペイントを用いました。

丸ペン3px、アンチエイリアス1

最初に3px幅、アンチエイリアス1(最も弱い線のスムージング)の丸ペンによる違いです。

丸ペン3px、アンチエイリアス1 読み取り分解能、左:0.01mm、右:0.005mm

上図左が「読み取り分解能」0.005mmタブレット、右が0.01mmタブレットによる描線です。この2本の線を見る限り、その差はほとんどわかりません。

丸ペン3px、アンチエイリアスなし

次は、3px幅の丸ペンで、アンチエイリアスなしの線です。

左が「読み取り分解能」0.005mmタブレット、右が0.01mmタブレットによる描線です。よくよく見れば、多少の差があることがわかります。どちらの線も断続的ですが、右の線の方がドットの数が若干多いのがわかります。

丸ペン7px、アンチエイリアス1

次は、線幅7pxの丸ペン、アンチエイリアス1の線です。

丸ペン7px、アンチエイリアス1、左が読み取り分解能0.005mm、右が0.01mm

左が「読み取り分解能」0.005mmタブレットで、右が0.01mmタブレットによる描線です。よく見ると、右の線が若干幅が広く見えます。

丸ペン7px、アンチエイリアスなし

最後に、7px幅の丸ペン、アンチエイリアスなしでの比較です。

丸ペン7px、アンチエイリアスなし、左が読み取り分解能0.005mm、右が0.01mm

左が「読み取り分解能」0.005mmタブレットで、右が0.01mmタブレットによる描線です。右の線が若干幅が広く見えます。その差は、この図のようなドットが見えるぐらい拡大して初めてわかるレベルです。

タブレットの「読み取り分解能」の差で、絵に大きな差は生じない?

「読み取り分解能」が0.01mmと0.005mmのタブレットによる描線は、今回の条件で比較する限り、ほとんど差がつかないと言えます。

また、実際のところ、感覚で0.01mmと0.005mmの違いを感じ取れるとはとても思えません。高精細な仕上げをしたいなら画像を拡大すればよく、その場合、タブレットの分解能よりも表示画像の分解能がかなり低くなるため、今回用いたタブレットの「読み取り分解能」の差は無視できます。

ただし、今回は一本の線で比較していますが、実際のイラスト作品は、無数の線と塗りでできています。一本一本の線の小さな差が、仕上がりに影響を及ぼさないとは決して言えません。

タブレットの価格の差は、総合的な機能や品質の差にある

今回実験に用いた2種のタブレットは、スペックを見る限りは、その金額の差は「読み取り分解能」の差にあるように思えます。ですが、「読み取り分解能」以外にもいくつかの違いがあります。

分解能の高いIntuous Pro Mediumは、ユーザー自らでタブレット面の交換が可能です。価格は高いものの、傷がつきやすいタブレット面を交換できることで、メンテナンス費用を安く抑えることができます。

また、パソコンのドライバーソフトの安定感にも大きな差があります。分解能の高いIntuous Pro Mediumでは、ドライバーによる不具合らしい不具合を経験したことがありません。対するIntuosの方は、カーソルが突然固まり、動作ができなくなる不具合がしばしば発生しています。その回避策はわかっていますが、動作が止まるたびに描く勢いも削がれることになります。

あくまでも想像ですが、価格の高い機種に開発リソースが割かれ、価格の低い機種は後回しにされているのかも知れません。いずれにしても、そうした品質の差がイラストを描く個々人の意欲にも少なからず影響を与えているのは事実です。

タブレットは、エントリー機種から入るのが自然

運よく2年ほどイラストが続けられたおかげで、2種類のタブレットを使う機会が得られました。

高額機種の方が様々な面で優れていることが今ならわかりますが、最初はやはり安価なエントリー機種から入った方が無難だと個人的には思います。理由のひとつは、いつまでイラストを続けられるかが最初の段階ではわからないからです。

初期段階で大きな費用をかけてしまうと、イラストを断念する際に、とても残念な気持ちなるような気がします。

ですが、「読み取り分解能」という基本スペックの差による描画品質の差はほとんどありません。安い機種だから絵が上手く描けないという言い訳にはならないのです。ただし、品質の良くない低価格機種を選んでしまった場合、性能以外のよくない部分に嫌気がさしてしまう場合があるかも知れません。

今回は限られた条件で比較を行ってみましたが、他の方法、あるいは他に重要な比較項目もあることでしょう。また機会がありましたら、改めて比較検討を行ってみたいと思います。

この記事が皆さまのお役に立てば幸いです。

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