髪が何となく描けるようになったキッカケ
私にとって、キャラ・イラストで特に難しいと感じているのはデッサンです。ですが、個々のパーツである「髪」や「衣類のシワ」などの表現もまた難しく、未だに苦労しています。
この記事では、描き方の難しい「髪」について、描き方のコツがつかめたキッカケについてお話しいたします。
教科書の「髪」の描き方を読んでも全く描けない
イラストを描き始めた最初の数か月、髪が満足に描けず髪を描くのが本当に苦痛でした。ネット上にある「髪の描き方」の記事を読んでも、内容は理解できるものの、髪らしい髪が全く描けません。
髪の描き方についての記事の多くは、頭髪の構造や髪型についての説明が中心です。こうした情報は知識として非常に重要でしょうが、髪を描くスキルは、こうした知識だけでは身に着きません。
今は自分なりに納得した髪の描き方ができていますが、実に単純なキッカケでそのコツをつかむことができました。
どうしても満足な髪が描けず、ある日のこと、自分の力で描くのを止めて、クリップスタジオペイントの自動的に髪を描いてくれるブラシ素材に頼ることにしたのです。
そのブラシで描いた線は非常に分解能が悪く、結局その線を当たり線にして仕上げ線を描かなくてはなりませんでした。
そうして下描きをなぞるうちに、髪らしい線の流れ、勢いのようなものが、手先の感覚として不意につかめました。
クリップスタジオペイントの素材があれば苦労しない?
私がイラスト制作に主に使っているアプリケーションはクリップスタジオペイントです。このアプリを導入することで、イラストを志す多くの仲間たちが提供する素材が自由に活用できるようになります。
主な素材の内容は、イラストを描くためのツールやテクスチャーのような絵のパーツなどです。ツールの一種であるブラシの数は非常に多く、今回ご紹介する「髪束が出てくるブラシ」もまた魅力的なブラシのひとつです。
この「髪束が出てくるブラシ」を使うことで、タブレット上にペンをスッと走らせるだけで図のような髪の束をいとも簡単に描くことができます。
こんな便利なものを使ったらわざわざ自分で髪を描く気になれませんよね。しかし、このブラシにはちょっとした欠点がありました。(導入当時)
問題は分解能が非常に低いことでした。線が粗く、画像を拡大するとたちまちドットが見えてしまうのです。
使い方にもよりますが、この髪ブラシは、私にとっては「当たり用」でしか使えないものでした。最初にこのブラシでおおよその髪の形を描き、それを下敷きにして仕上げ線を引くというプロセスになります。
髪ブラシの線をなぞった結果・・・
髪が描けると銘打ったブラシは他にもありますが、髪の表現にも好みがあります。このブラシをどうしても使いたかったのです。
全く描けない初心者にとっては、当たり線があるだけでもありがたいはずです。しかしながら、その時はいやいやながら下描き線をなぞりました。ところが、そうして何度かなぞっているうちに、髪を描くコツのようなものが不意につかめたのです。
上図Aは「髪束が出てくるブラシ」で描かれた見事な髪です。Bでは、Aの線をブルーに色変更。Cでは、上に重ねた仕上げ線レイヤーで下描き線をなぞっているところです。
こうして何度かなぞっているうちに、線のくねり方や勢いのようなものが手の感覚としてつかめたのです。なぞっている時に覚えた感覚で線を引くと、下描きなしでもそれなりに髪らしい線になります(D)。
この感覚ですが、例えとしては木の葉を一枚一枚つなげていくような感じです。単につなげていくだけなので、ショートからロングまで、あらゆる長さ、あらゆるカーブに対応できます。
髪の描き方のコツをつかめば様々な応用が可能
コツがつかめたと言っても、いきなりスムーズに描けたわけではありません。この感覚を忘れたくありませんでした。身体に覚えさせるために、何度も何度も繰り返し線を引きました。
こうした感覚は、ある程度繰り返さないと身体はすぐに忘れてしまいます。でも、自転車や車の運転同様に、ある程度を越したところで、自然に腕が動くようになります。
ある程度描けるようになったら、あれほど面倒で嫌だと感じていた髪がいつの間にか面倒とは感じられなくなりました。むしろ楽しいとさえ思えるようになったのです。さらに嬉しいことに、髪がそれっぽく描けると、髪だけでなく、ヒモやリボン、シャツの裾や袖などにも応用が利くことがわかりました。
私の場合は髪ブラシを下描きにしたことがキッカケでした。でも、きっかけはひとそれぞれでしょう。好きな作品や憧れるイラストレーターがいらっしゃれば、その髪の線をなぞることで描画感覚がつかめるかも知れません。
この方法って文字の練習に似てますよね。見本のグレイの文字をなぞることで、実際文字もきれいに書けるようになります。同様に、髪の描き方の習得だけでなく、顔や身体のライン、目や口、手や足と、線で表現される部分すべてにこの方法が応用できるかも知れません。
皆さんのイラスト制作にとって、この記事が少しでもお役に立てば幸いです。